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INTERVIEW インタビュー

インタビュー 公開日:2010年7月7日(水)

三浦后美 副会長(掲載当時)part2

【紹介】

三浦后美

明治大学大学院経営学研究科修士課程修了、後に経営学博士となる。

現在は

文京学院大学大学院経営学研究科教授
文京学院大学経営学部教授
であり、また

日本財務管理学会常任理事
日本財務研究学会評議員
証券経済学会幹事
も務め、特別非営利活動法人NPOフェア・レーティング常任理事としても活動している。

経営学部教授である三浦后美氏は、現在様々な留学生支援活動を行っている。
氏の活動理念や教育に対する想いについて聞く。

「この仕事は社会に対して価値がある」というモチベーションを会社・そして人材が持てるかどうか

三浦氏:
そうですね。
では逆に質問しますが、起業するときに重要なものは何だと考えますか?
私は起業したい、こういうビジネスを起こしたいというとき、最初に何を努力しますか?

――起業するのであれば必要なものは、資金・人材(人脈)・市場でしょうか?

三浦氏:
まず、資金がなければ何もできませんし、ビジネスの市場も当然重要です。
そして「制度」が必要だと私は思います。
やろうと思うことに対し、どれだけの認可が必要かなど、そういった制度が成り立っていないと事業は起こせません。
そして人材も、当然必要なものです。
では、その割合をどうみますか?
資金が100%だけでもできると思いますか?

三浦氏:
実は、資金は2割くらいのものなのです。そして制度3割、残りの5割はすべて人です。
人というのは精神でもあり、つまり「この仕事は社会に対して価値がある」というモチベーションを会社・そして人材が持てるかどうかにかかっています。
それが出来ない会社は消えていくのです。
留学も起業も、行動を起こすという面において大きな理念・夢・使命感をどれだけもてるかが共通しています。

三浦氏:
それについてはトップだけに限ったことではありません。そもそも起業する人はすでに大きな目標を持っていますから。
重要なのはそれにかかわる人たちです。
トップに対して「こういう考えもありますよ」と提示し、時には事後承諾させるくらいの行動力のある会社が伸びていきます。

三浦氏:
そうです。
確かに経営者の理念や思想はとても大事です。
しかし管理者、つまりそこで働いている人たちにも勢いがなくてはいけません。
そういう小さい筍がやがては大きな竹に生長していくのです。
トップの顔色を伺って行動しているようでは、ビジネスは成長しません。

経営精神の継承と経営の進化

三浦氏:
この会社をどういう理念で設立したか、それは継承していく努力をしなければ溶けていってしまいます。
しかし、その理念をその時代ごとに生かすためには進化もしていかなければならないのです。
ブランドにこだわり、我が社はこれだ!という主張だけでは時代についていけません。
経営精神の継承と経営の進化が必要です。

三浦氏:
はい。
文京学院大学は2009年に85周年を迎えたのですが、起業からそれだけの長い時を経ていけば創業当時の人はほとんど居なくなってしまいます。
この大学も創立者が女性の自立のために裁縫を身につけようという考えでアパートの1室から発足したものです。創業者が歩んだ道のりは決して平坦なものではなかったのであります。
当時ここにはお寺と三面大黒天様があったのですが、それを移動させていただいて学校ができたわけです。
その移動に際して長い時間がかかりました、認可を取得するまでになんと40年も要したのです。
当時、設立のために山の奥にあるお寺の総本山へ、明治の時代ですから交通も無いような場所へ何度も何度も出向いたそうです。
その創業者の遺言により富士山の見えるところにお墓があるのですが、今年(2010年)そのお墓にお参りするというツアーが行われました。
このツアーで創業者が歩んだ道を同じ山道を歩き、そして初めて、私はようやく学園創業の精神に触れたと感じました。
その精神を受け継いできて今、創業85年を迎えることができたのです。
会社も同じです、起こした精神を教育していく事、引き継がせることができなければ会社は消えてしまいます。
ビジネスの本質は「人の心」なのです。

三浦氏:
そうですね。
当時の思いに触れることはとても大切です。
しかし、全て根底には情熱や夢・希望があり、それをそのまま残すことも大事ですが、いかにそれを現代の社会にあわせて進化させるかが今を生きている経営者の仕事でもあります。
変わらないといわれるために、変わる努力もしなければいけません。

見えない数字をどれだけ読めるかが経営の本質

三浦氏:
決算書の先の数字を読めることが経営者に必要な能力です。
決算書は過去のデータでしかありません。そして、経営は過去を踏み台にして将来どう続いていくかを考えなければなりません。
10人のうち9人は、決算書から3年後5年後を見ることはできませんが、その中に1人だけ先を見通せる人が居ます。
それが経営者なのです
見えている数字を分析するのも自己評価のために大切ですが、見えない数字をどれだけ読めるかが経営の本質でしょう。

三浦氏:
中小企業においては経営者の情熱・胆力です。
どれだけ財産があっても社長が周りを見ていなければ意味がありません。
次に営業、商品をどれだけ展開させられるかが重要です。
最後に、財務担当が預かった資金をどう管理し見極めているか、この3つです。
経営者が数年先の決算を読めるかどうかも、これらの組織がしっかりしているかにかかっています 。

人に対する愛情がなければ人の心を動かすことはできない

三浦氏:
漠然とした言い方になってしまいますが「友愛精神」だと思います。
今の経営者の多くは自分を保持するために何かあると周囲を切ってしまうことが多くなっています。
良い経営者・リーダーは、自分が苦労してでも周囲を守ろうとするのです。
経営者が自分の好き嫌いで人を切るようになると、その会社は自由を失っていきます。
そして人前でしっかりと説得できる力、話す力も大切です、人を引き込む話ができることもリーダーの条件ですから。
しかし、経営者には情がなければいけません、情がなければ水と油をまぜることはできないですから。
従業員に売り上げを上げさせるためには叱咤しなければならない時もあります、しかし能力を生かすために適材適所も考えなければならないのです。
叱咤もアドバイスも全て、人に対する愛情がなければ人の心は動きません。
一人だけが先を走っていても、周りが付いてこなければ進むことはできません。

part3へ続く

※所属、役職などはインタビュー当時